「あさきゆめみし2」(大和和紀)

漫画の便利なところと不得手なところ

「あさきゆめみし2」(大和和紀)
 講談社漫画文庫

気位の高い六条御息所は
魂が遊離するようになる。
葵の上は物の怪に取りつかれ、
源氏の子を出産したものの
落命する。
朧月夜は源氏との密会の現場を
父・右大臣に見つかってしまう。
姉の皇太后は激怒し、
源氏失脚を画策し始める…。

源氏物語の原文を読み通す作業に
悪戦苦闘しております。
寂聴訳谷崎訳・与謝野訳の
三つの現代語訳版と、
高校生用の国語便覧、
そして源氏物語に関わる資料を
とっかえひっかえ参考にしながら
読み解いているのですが、
古文の文法の知識すらない私には、
なかなか難しい作業となっています。
特に、
視覚的イメージのわかない部分が
多々あるのが厄介なところです。

その点、漫画はまさに「視覚的」です。
本書を読んで初めて納得できる部分が
多々あります。

本書を読んで(見て)納得した部分の
最も大きなものは、
葵上と六条御息所の
「車争い」の場面です。
谷崎源氏を読んでも、
瀬戸内源氏を読んでも、
状況をよく掴めませんでしたが、
本書のおかげで理解できました。
もちろん、本書に頼る前に、
資料(高校の国語便覧という資料集、
これが結構使える)を参照しています。
平安時代の「車」が
どのようなものかわかっても、
それらの一隊が争いごとを起こすとは
どのような状況か、
ぴんときていませんでした。

そのほかにも、宮中の様子、
加持祈祷の様子等、
文章では説明の難しいところも
一目でわかりました
(漫画ですから当然ですが)。
もっとも、その表現が正しいかどうかは
疑ってかかる必要は当然あります。
やはり丹念に資料をあたることが大切と
自分に言い聞かせています。

一方、漫画であるために
描きすぎている部分もあります。
この巻では源氏と若紫が
結ばれる場面でしょうか。
原文にはその部分の
具体的な描写はありません。
「男君はとく起きたまひて、
 女君はさらに
 起きたまはぬ朝あり」
という一文と
「あやなくも隔てけるかな
 夜をかさね
 さすがに馴れし夜の衣を」
の和歌で
気付かせるようにしているです。
読み手がそれとなく察するように、
紫式部が上品に
さらりと流したところを、
漫画はわざわざ描いています。
漫画の場合、
「見せる」ことには便利なのですが、
「気付かせる」ことは
不得手なのでしょう。

漫画は漫画であって、
それ以上でもそれ以下でも
ないのですが、
上手に活用して古典の世界に
近づくことが大切だと思っています。

※「見せる」ための漫画なのですが、
 少女漫画の特質なのか、
 女性の顔の区別がつきにくいのが
 難点です。
 末摘花と花散里以外の女性の
 区別がつきません。

(2020.4.25)

Jill WellingtonによるPixabayからの画像

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